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移転構想から一転、改修による現地存続が決まった宮城県美術館の様子を見てきました。
間もなく40年を迎える施設は老朽化が目立つ場所もあります。
青葉山や広瀬川に囲まれた自然豊かな環境はまさに「杜の都」
仙台城址や仙台市博物館、東北大学川内キャンパスなど歴史・文化・教育が集積し、改めてこの地に存在することの価値や魅力を感じました。
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【宮城・仙台】おすすめの美術館・博物館20選美術館と庭園の紹介
4つの庭園と本館、佐藤忠良記念館から構成されています。
本館1階は常設展示室が2室、創作室、講堂、図書室、レストラン、ミュージアムショップ。2階は特別展示室、地下1階には県民ギャラリーです。
佐藤忠良記念館は1階に展示室とコーヒーショップ、地下1階に多目的ホールがあります。
展示室への入室は観覧券の購入が必要ですが、庭園やその他の施設は自由に利用可能です。
前庭
美術館を訪れたときにはじめに通る建物正面の広場です。緑豊かな植栽に囲まれた空間にモニュメントや彫刻があります。
中庭
前庭から本館入口までの間にあるピロティの列柱に囲まれた庭です。
作品展示やワークショップ、コンサートなども開催されます。
全体的にタイルの亀裂や欠損があり老朽化が一番目立つ場所でした。
亀裂から水が浸透し凍害が発生しているそうです。
本館
正面の本館入口と北庭側入口から入館できます。
館内に入るとエントランスホールが広がり各展示室や施設、佐藤忠良記念館とも繋がっていました。
重厚感のある空間。
館内はきれいで老朽化を感じさせません。
式典会場やミュージアム・コンサート等も開催されるそうです。
エントランス東側は中庭を囲むように以下の施設があります。
▼カフェ モーツァルト・フィガロ
市内に5店舗展開する仙台の老舗カフェです。ハーマンミラーなどデザイナーズチェアとアンティーク家具を揃えクラシックが流れる開放的な空間。
朝9:30から営業しておりケーキやパフェ、パスタやラザニアなど食事メニューも豊富です。
▼ミュージアムショップ
企画展に合わせた限定グッズも販売。
▼創作室
いつでも誰でも使えるオープンアトリエ。大きな器材や各種道具が揃っており多種多様な制作が個人ペースで行えます。スタッフの方が常駐しており相談も可能。予約申込み不要・無料で利用できます。
▼講堂
講演会や演劇、映画、舞踏、音楽などの催しを行っています。
エントランス北西の通路に図書室があり、佐藤忠良記念館へと続いていました。
佐藤忠良記念館
本館西隣には佐藤忠良記念館があります。
宮城県大和町出身の彫刻家・佐藤忠良氏によるブロンズ彫刻、素描などを展示。
建物内の本館へ続く通路角にはカフェ モーツァルト・パパゲーノがあります。
北庭の見えるスタイリッシュなカフェでケーキ、ドリンクを販売。
本館と佐藤忠良記念館の間にある階段を降りると県民ギャラリー、アリスの庭、北庭へ。
この辺りは西側通路の植え込み内の土壌が沈下し、一部外灯に傾きがみられるそうです。
県民ギャラリー
美術を主とした一般市民による作品の展示・発表の場。無料で観覧できます。
アリスの庭
本館と佐藤忠良記念館との間にある彫刻庭園です。
子供や動物を題材にした彫刻11点を設置。
佐藤忠良記念館の外壁はアーチを描くハーフミラーになっており、幻想的な空間を創り出しています。
4つの庭園のなかで一番好きな空間でした。
本館側はレンガの階段になっておりメルヘンな雰囲気も感じます。
円柱状の空間は真下から見上げる空と鏡に映る景色が不思議な感覚。
北庭
アリスの庭から続く樹木に囲まれた自然豊かな庭です。
広瀬川河畔にあり、川のせせらぎが心地よく聞こえました。
鬱蒼とした植物で広瀬川が見えづらくなっています。手入れや整備をすればとても素敵な空間になりそうです。
自然豊かなためか、へび注意の看板も。
池の滝は漏水が生じ運転していないそうで、池の中は苔が生え、水は緑がかって見えます。
回遊式の庭になっておりのんびり散策を楽しめました。
階段を上ると佐藤忠良作の彫刻もありました。
北庭のタイルも全体的に亀裂、凍害が起きているそうで老朽化を感じる場所が多くありました。
宮城県美術館の歴史
1960年代、宮城県芸術協会が仙台市に美術に関する公的施設がないことから「美術館の建設運動」を開始しました。
1970年代には県による県立美術館建設の構想が進められ、宮城県芸術協会が建設候補地を①川内②榴ヶ岡公園とする要望書を知事に提出。利便性の良さから榴ヶ岡が有力となっていました。
しかし、その翌月の1978年6月に宮城県沖地震が発生。地震による教訓や面積が狭いことなどから建設地は広大で地盤の安定している川内に決定。
そして1981年11月3日、青葉区川内に県内初の公立美術館として宮城県美術館が開館。
本館は近代建築の巨匠・故前川國男氏による設計。1983年に日本国内の優秀な建築作品に与えられるBCS賞を受賞、1998年には公共建築百選にも選ばれました。
東北や宮城にゆかりのある作家を中心に油彩画、日本画、洋画、版画、水彩・素描、彫刻、写真など約6800点を収蔵しています。
1990年に西隣に佐藤忠良記念館が開館し、本館との間に「アリスの庭」も設置されました。
宮城県美術館移転問題とは?
宮城県は施設・設備の老朽化が進む県美術館について2018年3月に老朽化の対応や新たな機能を備えた「宮城県美術館リニューアル基本方針」を策定・発表。
その後、2019年11月に県美術館を県民会館とともに仙台医療センター跡地に移転・集約する「移転新築案」を発表したところ、強い反対の声が出ました。
芸術的価値の高い建造物、歴史ある文教地区に存在していることなど現地改修を望む声が集まり、移転反対の市民団体が発足。東北大学の教授らによる有志の会も移転中止を訴えました。
移転新築に対し多くの反対意見が高まる中、「増築しない現地改修案」を新たに加え3案が検討されることに。
そして2020年11月16日、村井知事は移転を断念し、増築せずに現地改修する方針を表明しています。
周辺は自然と歴史溢れる文教地区
美術館の建つ川内地区は青葉山や広瀬川の豊かな自然に囲まれ、仙台城跡、青葉山公園など歴史と伝統のある場所です。
美術館前の仲ノ瀬橋から続く道路は街路樹が並び、東側に二高、南側に東北大学川内キャンパスや仙台国際センター、仙台市博物館があり、県内有数の文教地区となっています。
自然と調和した美しい景観は歴史を感じる風格があり、改めて素晴らしい場所だと感じました。